抄録
後期中新世以降の島嶼集団ダイナミクス:中琉球に固有の哺乳類 3 属(Pentalagus,Diplothrix,および Tokudaia)における比較系統地理学的研究.琉球列島は後期中新世以降,島間の連結と分断を繰り返してきた複雑な歴史を有している.特に多くの固有種が生息する中琉球では,過去数百万年にわたる島嶼構造の変化の下,生物がどのように進化してきたかについて,未だ多くの疑問が残されている.本研究では,中琉球に属レベルで固有の 5 種の哺乳類(アマミノクロウサギ Pentalagus furnessi,ケナガネズミ Diplothrix legata,およびトゲネズミ類 Tokudaia 属の 3 種)を対象に,ゲノムワイドな一塩基多型(SNP)およびミトコンドリア DNA 変異に基づいた比較系統学的・系統地理学的解析を行った.SNP およびミトコンドリア DNA の双方の解析結果から,上記の 3 属いずれでも,各島集団(奄美大島,徳之島,および沖縄島.ただしアマミノクロウサギは沖縄島に生息しない)はそれぞれ独立した系統であることが確認され,奄美大島の集団の遺伝的多様性が最も高いことが明らかとなった.島集団間の分岐時期は,アマミノクロウサギとケナガネズミでは中期更新世と推定されたのに対し,トゲネズミ類では後期中新世から前期更新世に遡ると推定された.以上の結果は,他の陸生動物の先行研究の結果も合わせて考えると,分散能力が限定されている種については更新世以前に生じた島嶼の隔離が遺伝的分岐に重要な役割を果たした一方で,一部の種においては中期更新世まで島間の移動が生じていたことを示している.
本文言語 | 日本 |
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ジャーナル | Mammal Study |
DOI | |
出版ステータス | 出版済み - 2025/01 |
キーワード
- Central Ryukyus
- chronology
- Endemism
- island biology
- Paleobiogeography