抄録
指定管理委託契約の債務不履行に基づく損害賠償請求事件(富山市)名古屋高裁金沢支部 令和5年4月19日判決・本誌506号94頁
令和4年(ネ)第220号 控訴棄却・確定
原審・富山地裁令和4年10月6日判決・令和2年(ワ)第307号(本誌506号96頁)
公の施設の管理委託契約の終了について、指定管理の取消事由がないにもかかわらず、実体とは異なる外形を整えて指定管理の取消しを行ったものであり、指定管理者による契約の一方的な解約ではなく、合意解除であると判断された事例である。現在、自治体が保有するインフラやハードには修理・改修を必要とするものが少なくない。こうした施設の修繕を適時にかつ適切に行っていくことが、住民の福利にも資することであるにもかかわらず、原資(予算)は潤沢ではないことから、このような自治体と指定管理者間における修繕費用の負担に関するトラブルも少なくない。
概して、「比較的大規模な修繕箇所が発生した折には自治体と指定管理者側との話し合いで決定する」という規範性の欠けた認識で、現場では運用されている。そのため、多くの場合には、受注者側である指定管理者側が泣き寝入りしがちである。
だが、複合型宿泊施設「グリーンピアせとうち」のように指定管理者側が自治体に施設の大規模修繕費用の拠出等を求めて提訴した事案(広島高判令和4年6月9日LEX/DB文献番号25593198)等もある(相殺の抗弁により、請求が棄却されている。)。こうした施設には、残念ながら、指定管理者選定の入札参加事業者がいないという現状でもある。
そのため、指定管理者の予見可能性及び事業性確保のため、並びに本来の目的である民間ノウハウを積極的に活用した経営努力を促すことで住民サービスの向上を図るためにも、施設の修繕には一定の費用の確保が必須といえる。
令和4年(ネ)第220号 控訴棄却・確定
原審・富山地裁令和4年10月6日判決・令和2年(ワ)第307号(本誌506号96頁)
公の施設の管理委託契約の終了について、指定管理の取消事由がないにもかかわらず、実体とは異なる外形を整えて指定管理の取消しを行ったものであり、指定管理者による契約の一方的な解約ではなく、合意解除であると判断された事例である。現在、自治体が保有するインフラやハードには修理・改修を必要とするものが少なくない。こうした施設の修繕を適時にかつ適切に行っていくことが、住民の福利にも資することであるにもかかわらず、原資(予算)は潤沢ではないことから、このような自治体と指定管理者間における修繕費用の負担に関するトラブルも少なくない。
概して、「比較的大規模な修繕箇所が発生した折には自治体と指定管理者側との話し合いで決定する」という規範性の欠けた認識で、現場では運用されている。そのため、多くの場合には、受注者側である指定管理者側が泣き寝入りしがちである。
だが、複合型宿泊施設「グリーンピアせとうち」のように指定管理者側が自治体に施設の大規模修繕費用の拠出等を求めて提訴した事案(広島高判令和4年6月9日LEX/DB文献番号25593198)等もある(相殺の抗弁により、請求が棄却されている。)。こうした施設には、残念ながら、指定管理者選定の入札参加事業者がいないという現状でもある。
そのため、指定管理者の予見可能性及び事業性確保のため、並びに本来の目的である民間ノウハウを積極的に活用した経営努力を促すことで住民サービスの向上を図るためにも、施設の修繕には一定の費用の確保が必須といえる。
本文言語 | 日本 |
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ページ(範囲) | 52 |
ページ数 | 55 |
ジャーナル | 判例地方自治 |
巻 | 514 |
出版ステータス | 出版済み - 2025/02/03 |
キーワード
- 指定管理者
- 委託契約
- 損害賠償請求